*探偵掌編*
■幽霊探偵の告発■
犯人「…いま、何か背中がぞくりと…。」
■漁夫の利探偵の事件簿■
蛤探偵「…密室のトリックはこうだ。こうすれば簡単にとけるだろう。」
鴫探偵「…つまり、このトリックを使えたものは、たったひとりしかいない。」
蛤探偵「ゆえに」
鴫探偵「犯人は」
漁夫の利探偵「お前だあっ!」
■真・漁夫の利探偵の事件簿■
蛤探偵「…ゆえに、犯人はAしかいない。」
鴫探偵「いや、犯行はBにも可能だった。」
蛤探偵「Aだ」
鴫探偵「Bだ」
漁夫の利探偵「…つまりこの事件は、蛤&鴫、お前達二人の共犯だったのだな♪」
蛤探偵&鴫探偵「何ィ!?」
■ポエマー探偵と助手■
とある村で、密室殺人が起こった。そこへやってきたのは放浪のポエマー探偵と名乗る奇妙な男と、その助手だと言う美少女だった。村人達は、とりあえず彼らの推理を聞いてみることにした。
探偵「では、ゆきます…
『月の光が水に落ちる
それは、あのひとの残していった影
凍りついた心をふきぬけた一陣の風
わたしの心をあのひとの歌声は
やさしくかき鳴らしていった
ほら、透明なあなたは今
わたしをとおりぬけてゆく
運命にひかれてゆくように
あなたはここから去ってゆく』」
助手「えーと、つまり探偵は、この密室は、糸とテープレコーダーを使って作られた、と言っております。…先生、いつもながら見事なポエム推理です。」
■続・ポエマー探偵と助手■
助手「それにしても、あの村は恐ろしいところでしたね。」
ポエマー探偵たちは、ただいまポエム推理を聞かせてきた村で、袋叩きにあってきたばかりなのだった。
おそらく、『村のひみつ』を守るための犯行だろう、と探偵たちはあくまでも信じ込んでいる。
探偵「『どきどきしちゃうね、こんなのはじめて
今までに誰も書いた事のないような、そんな恋をするのよ
ずっと一緒にいたかったって、言ったら信じてくれるかな?
ううん、そんな事はどうでもいいの、はやく隣に来てよ
私の心臓の中を、プラスとマイナスの電流が駆け抜けていったわ
あなたの身体の奥のほうに、寂しげなウサギさんがすんでるわ
ミンミンゼミがつくつくぼーしと鳴いたの、不思議ね
そしてわたしはもう最高の感じ』」
助手「…探偵、そのポエムは?」
探偵「つまり、真実は闇の中、と言う事さ。」
■難問・珍問・奇問■
問題「以下の告白文を読み、主人公が犯行に至った理由を三十字以内で答えなさい。句読点は文字数に含む。」
模範的な生徒(たんてい)の解答
「彼は、あまりにも不幸な人生に絶望し、やけで犯罪をおこなった。(三十字)」
反抗的な生徒(はんにん)の解答
「お、おれの気持ちが三十字で書けてたまるかああ!!(二十四字)」
(同じような例でミステリー作家編
編集者「じゃあ、十二月七日が締め切りで、二百枚ほどの中篇ミステリをお願いします♪七日に必ずとりに行きますからー♪(現在十月五日)」
作家「……この(わたしの頭の中にある)壮大な殺人事件が、たかだか二ヶ月と二日、しかも二百枚なんかで書けてたまるかあああ!!」)
■難問・珍問・奇問パート2■
問題「…(前略)したがって、犯人はあなたです。」
そう言って探偵は、彼女を指差した。その表情には、苦悶の色がにじみ出ていた。」
この時の探偵の心境を、簡潔に述べよ。
クラス一の問題児の場合
「指の先にはロケット砲がついている。探偵はロケット砲で彼女の胸を狙っているが、その発射時には痛みが伴う。はい、終わり」
想像力豊かな女生徒の場合
「探偵は自分の職業を悔いている。たとえ誰が犯人であっても、無慈悲に告発しなければならない探偵という身分を。今告発された『彼女』は探偵の大事な人なの。まあ、そんな事問題文には書いてないけど、ああいうミステリアスな美女には、ひそかに探偵も惹かれてたりするのがジョーシキでしょ!」
高校生戦隊レスキュー5・リーダーレッドの場合
「彼女は最後の手段にと隠し持っていた液体を飲む。それは毒薬などではなく、身体の神経を活性化させる(?)巨大化用の秘薬だ。しかし、その秘薬にも欠点があり、それは理性というものをぶっとばす副作用を持つのだ。探偵は暴走する彼女を止めるため、いま仲間を呼び出す発信機に手をかける。さあ、巨大ロボを呼び出して合体だ!まけるな、探偵戦隊DDD!!青き地球から犯罪を撲滅するその日まで…。第十一話『告発、そして…』完。第十二話『秘密兵器ジハクダー、誕生』に続く(以下略)」
保健室の主の場合
「(眠い…。)これはあれだろ?頭痛かなんかだろ?ちなみに俺もいまちょっと頭痛がしてて…センセー、保健室行ってきていいっすか、保健室。」
『別にいいけど…どうして肩を抑えてるのかしら?』
「いやあ、こないだBさんに殺されかけた時の古傷が痛んで…。」
『…嘘おっしゃい。』
■不可能犯罪の落とし穴■
僕はその日、森の中を歩いていた。僕のすぐそばを通り抜けてゆく風が心地よい。落ち葉のふかふかした感触を楽しみながら、僕は上機嫌だった。
その時、である。
ずぼり、嫌な音がして、僕の身体は、重力から自由になった。完全に落ちている。落とし穴だ!!
「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああめああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。」
思わずパズルしてしまったが、それにしてもおかしい。普通これだけ長く叫んでいたら、その間に穴の底へ付いているはずなのだが。僕の身体はまだ落ちつづけている。こんな深い穴、人間に掘れる筈がない!
僕は、とりあえず他にすることも無いので、ただひたすら落ちつづけてみた。
あなたがこのページを読んでいるその時も、僕はこうしてひたすら落ちつづけているのだろう…な。
■逆密室■
ある日、名探偵であるA氏は、大きな館に招かれた。ここで、絶対に不可能な犯罪が起こったというのだ。屋敷の中には、老若男女とわず、たくさんの人間がいた。
大きな屋敷の中の一室でA氏は、依頼人である、被害者の妹、あゆみと対面した。
あゆみ「今日来ていただいたのは、我が兄、司郎が殺された事件に関する調査を、
ぜひ名探偵のA氏にお願いしようと思っての事です。」
A「詳しく話してください」
あゆみ「あの日、わたし達は大きなパーティのために、一族、友人、恋人…。
その他わたし達に関わりのあった人間はすべて、この館にあつめられました。
ものすごく大きなパーティでした。関係者すべてが集まるのですから。
しかし、皆が集まったところで、アナウンスがはいりました。
『今夜、今この館にいるものの中で、一人が殺される。そして、犯人もまた、この中にいる。』
ただのいたずらだと思っていたのですが、こうして兄が殺されてしまったのです!!」
あゆみは泣き崩れた。その肩を支えるA氏。
あゆみ「ごめんなさい。…あの時兄は、この屋敷からでていきました。
そのすぐあと、嵐によって、屋敷と外界とをつなぐ橋が壊れてしまったのです。
ここは、陸の孤島となりました。
今日橋の復旧が終わり、ようやくあなたにもきてもらえたわけです。」
A「なるほど、それでこんなに人が…」
あゆみ「ええ、橋を渡るのに整理券が配られてますわ。
兄は翌日、ここから遠く離れたH県の山荘で死体で発見されました。」
A「…。」
あゆみ「不可能なんです。あの橋を渡らずに、ここから外へ出てゆくというのは。
アナウンスがあってから、兄が行ってしまうまで、橋が崩れるまで、
そして遺体で発見されるまで、ここから出て行ったひとは、一人としておりませんでした!
ここの誰にも、兄を殺す事は不可能だったんです。」
A「……あのう…非常に申し上げにくいのですが、それは単なる外部犯、なのでは?」
あゆみ「……。」
あゆみは、ぱちんと指を鳴らす。そのとたん、わらわらと出てくるわ出てくるわ、屈強な男達が二百人ばかり総出で、探偵であるA氏を取り押さえた。
あゆみ「だから、あなたを呼んだのですわ、探偵さん。」
にこり、非常に美しく微笑むあゆみ。
あゆみ「パーティには、わたし達とかかわりのあった者はすべて呼ばれたんです。
そう、それこそ袖触れ合うも夫婦の縁ですわ。
そして、そのパーティによばれなかったのは、世界人口のうち、あなた
…つまり、第一発見者兼探偵さんだけだったのです。」
A「そんな…。」
あゆみ「ですから、あなたは今のところ、兄を殺した最有力容疑者なのですよ。
さあ、皆の衆、この人を牢獄へ」
A「ち、ちょっと待ってくれ、わたしは何も…。」
あゆみ「外部犯だといったのはあなたでしょう?撤回はきかなくてよ。連れておゆき。」
―――その後、A氏がどうなったのかをしるものは、一族の関係者以外には、いない…。
■教祖探偵只今布教中■
僕が道を歩いていると、突然後ろからけたたましい太鼓と、鐘か何かの音が響いてきた。
それはとてつもなく強く僕の鼓膜を揺らし、僕は心臓が飛び跳ねるのを感じた。
その時である。僕の肩を誰かががしりとつかんだ。かなり大きな男の手だ。
「もし、そこの道行く男の方、おぬしもしや、心につかえている事がござりませぬか。」
妙な口調だった。僕は
「別に悩みなんてないよ。」
と言って、肩に載っている手を振り払おうとした。
が、彼の手は力強く僕の肩を押さえ込んでいて、僕程度の力では離れなさそうになかった。
「いいや、おぬしの周りの『意思』が言うておる。おぬしは何か大きな問題を抱えておるのだろう。そのような『意思』がお前を取り巻いておる。」
「『意思』って…一体なんなんですか!」
「おぬしたちの考えているところの『神』…われわれが『作者』と呼んでいる者の意思が、おぬしをとりまいておるのだ。
その『意思』に逆らう事は、おぬしには出来ぬ。」
「作者って…メタミステリじゃないんだから…。」
僕はあきれ果てて言った。メタにかぶれた人間の増加で、こんな宗教まで現れてしまったのか、と、僕は日本ミステリの将来をしばらく憂える。
「よいのか、おぬしはこのままでは、『作者』の意思に従うだけの人形となってしまう。
わしには見えるぞ。おぬしが『意思』に操られ密室殺人を起こす姿が。
いくら創造主だからといって、たかがミステリひとつを書くために、そのような事が許されるはずが無い。
おぬしは『人間』になりたくはないのか。」
「だから、もう放っておいて下さいってば。僕には悩みなんてありませんし、殺人事件を起こす予定もありません。」
僕は叫んだ。
「わしは『作者』の暴挙を見ていられぬのだ。わしのところで修行する気はないか。精神を磨けば、『作者の意思』などにまどわされぬですむ…。」
「やりません。」
誰がそんな奇妙な教義に頷くっていうんだ。僕はきっぱりと断った。こういう人にはびしっと言っておかないと。
僕は彼の手が少し緩んだ隙に、すたすたと逃げた。あんな怪しい人間のいう事が信じられるか。
いや、もし本当だったとしても、『作者の意思』を受け入れないという事は、僕らの『物語』の存在を否定する事になり、つまりはその物語のために生まれてきた僕自身をも否定する事になるのではないか。
僕はそう考えて、とりあえず、南京錠とロープを買いに行くことにした。なんとなく、そういう気分だったのだ。
おそらくそのうちこれらが、何かの役に立つ事になるに違いない。
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