**************** 赤い糸 ****************



ふと気がついた 小指を取り巻く赤い色
聞いたことがある 伝説の赤い糸 少女達の夢物語
目を凝らしてその先をうかがう 糸の伸びた先は遠すぎて
わたしはそれを引っ張った 運命の糸をたぐりよせた



ぐるぐると 糸は私の左腕にまきつき
これだけあれば立派な手袋が作れそう

それでもまだまだ糸の先は見えず 運命の人の姿は見えず
わたしは糸をたぐり続けた 運命の糸をまきとり続けた



ぐるぐると 糸は私の左腕をとりまき
この分なら立派なセーターも作れそう



まいてもまいても糸は永遠に続くよう
引いても引いても終わることなく
誰かが現れることもなく あなたが現れることもなく
次第に重くなる左腕に 次第に動きが鈍くなる右腕で
わたしは糸をまきとり続けた この恋の糸を信じつづけた



ぐるぐると 糸は私の左腕をしばりあげ
これなら立派な靴下と 帽子とズボンとマフラーが
みんな一緒に 作れそう



次は編み棒を探して わたしはあなたに
手袋とセーターと靴下と それから帽子にズボンにマフラー一揃い
この糸で編み上げ 贈ろう



やがて遠くに見えた人影 運命の相手の姿
こちらへ左腕を伸ばし まるで救いを求めるように
わたしはさらに糸をまきとり続けた
あの人がわたしのもとへ きちんと辿りつくように



ぐるぐると 糸は私の左腕にまきとられ
さあそして今度は 一体何をつくろうか



遠くに見えたあの人の姿が 小さくなっていくように見えるのは何故
糸の先にかかる力が 小さくなっているように感じるのは何故
何かとても大切なものが まきとられていくように思うのは何故



きっと 気のせいだわ



するりするり するりするり ほどけてゆく糸が
くるくると くるくると 私の左腕に重なり 
さあそして わたしには一体 何が作れる
さあそして わたしには一体 何が残る



運命のあの人の姿は 豆粒のように小さくなり
運命のあの人の姿は 編みかけのセーターのようにほどけ
運命のあの人のすべては 私の左腕に



そして 私に残されたのは 膨大な量の赤い糸
彼の血潮の色にも似た 膨大な量の赤い糸



次は編み棒を探して 
手袋とセーターと靴下と 帽子にズボンにマフラー一揃い
それからあなたを 運命の人を
編み上げそして この手にいだこう


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